image
bg
report

Andiamo avanti、くノ一!!

2008年6月22日
プレナスなでしこリーグ2008 Div.1 第8節
伊賀FC くノ一 vs TASAKI ペルーレ (上野総合運動公園)

「今期? 一言で言えば、最悪ですね…」
「せめて、自動降格だけでも避けてもらいたいのだけれども…」

と言う伊賀FCサポーターの気持ちを表すかのように、今日の伊賀上野は、雨、そして雨、時々、大雨…。この悪条件の中、伊賀FC くノ一は、homeにTASAKI ペルーレを迎え、Div.1第2クールの初戦(第8節)に望んだ。
第1クールで伊賀FCは、ベレーザ戦で0-13(home)、浦和戦でも7-0(away)という大差による敗北と苦汁をなめ、勝ち点では8位の新潟Lを上回り7位に位置しているが、得失点差(-29)ではその新潟Lと比較しても、すでに2倍近い差がついている。2007シーズン、くノ一はDiv.1/Div.2の入換え戦を経験(しかもPK戦で5-4での残留決定)していることからも、降格という”崖っぷち”から一歩でも早く這い上がりたい気持ちは他のチームよりも強いはずであろう。となると、homeでの初勝利という結果で心機一転、第2クール以降での巻き返しのきっかけとしたいところである。しかも、前日に行われた新潟L vs 浦和(同8節)の1-1という結果により、新潟Lも勝ち点を2と伸ばし、徐々にくノ一に忍び寄ってきた。もっとも、そこはいかんせん、”くノ一”。忍びよる足音には敏感なのであろう。今日の雨の中でのピッチ練習では、いつもに増して気迫に満ちているように見えた。

さすがに、この天候なので、”いつもの” くノ一チアーリーダース”の出番はなかったが、310名の観客が見守る中、

♪ くノ一 イレブンのため~
  俺たちは 燃える
  いつも マイヨジョ-ルが ついている
  Forza 伊賀FC Campione
La la la la la la …       ♪

と、くノ一サポーターによる応援歌に合わせ選手が入場。なんと、この応援歌があたかも忍術かの如く、雨があがった。

伊賀FC くノ一は前節と同様に

GK: 大野麻耶(#1)
DF: 庄子菜摘(#3)、池内理沙(#4)、清原祐子(#6)、村上真理(#7)
MF: 宮本ともみ(#10)、吉泉愛(#12)、堤早希(#16)、永留かおる(#18)
FW: 村岡夏希(#11)、大歯裕子(#19)

がスターティングメンバーとしてピッチへ(キャプテンでセンターバックの小野は今日も不在)。天候の回復ばかりではなく、円陣を組む選手の笑顔からも、今日はやってくれそうな雰囲気が伝わってくる。

12時、TASAKIのkick offにより前半45分が開始。くノ一の最大の課題は、大量失点から明らかなように守備にあるが、今日は、積極的に前からもプレスを仕掛け、TASAKIとしても、なかなか自分たちのリズムが作り出せずにシュートにまで持ち込めない。さらに守備だけではなく、左から攻める、右から攻める、さらに中央からも攻める。

そして、大野のfine saveもあり、試合は徐々にくノ一ペースの展開に。40分を過ぎてもTASAKIにはシュートを1本しか許していない。こうなれば0-0で折り返せる、と期待したが、これは見事に良い方向で裏切られた。終了直前の44分、大歯のコーナーキックを宮元が頭であわせてゴールネットを揺らした。リスタートの時間もなく、そのまま前半が終了(1-0とくノ一のリード)。TASAKIの選手の浮かぬ顔と対照的な明るい表情のくノ一選手。

さらに、今日のハーフタイムは伊賀FCのユニホームスポンサーである井村屋さんの新商品「とろ~りスイーツ・ドリンクマンゴープリン」と「とろ~りスイーツ・ドリンク杏仁豆腐」も提供され、お腹も満足のサポーター。(Photo_09: ハーフタイムに提供された井村屋の新製品) 改めて「今日のくノ一はやってくれそうだ」という雰囲気がスタジアムを包み込む中、後半のkick offを迎えた。

後半に入ると、TASAKIも自分たちのリズムを作りはじめ、徐々にTASAKIの前線にボールが供給されるようになってきた。このTASAKIペースの中、ボールが次々とくノ一ゴールを襲う。そして、後半15分には大石のシュートがついにゴールに吸い込まれてしまった(1-1)。しかし、今年のくノ一はこの程度でめげてしまうようなチームではなく、再度、捨て身での攻めに転じた。この積極的な姿勢が功を奏し、同点とされた3分後には、永留のあげたクロスを大歯が受けGKと1対1に持ちんだ。大歯はこのチャンスをしっかりと決め、2-1と再びくノ一がリード。

さて、ここで頭をよぎったのは、第1クールのデータである。第1クールでの総失点(-35)のうちの約半分は、ここからの時間帯で失っているのである(後半15~30分で-9点、後半30~45分に-8点)。つまり、くノ一に取っては、まさに正念場の時間帯に突入したことになる。まず、最初の鬼門である後半15分~30分までは、守備陣も集中力を保ち続け、大谷にシュート1本を許すもゴールは許さず。ここまでくれば、「今日は勝利か!?」と言う期待が大きくなる中、ついに後半30分が経過。もっとも、くノ一にとっての正念場の時間帯であることには変わりはない。逆に、TASAKIにとっては第1クールでの出遅れた感もあり、「こちらも負けてはいられない」と言う気迫が徐々にくノ一に呪文のように襲い掛かりはじめた。ついに、後半31分にはコーナーキックから下小鶴にゴールを許し、再び2-2の同点に追いつかれてしまった。 もちろん、くノ一も決して下を向き始めたようには見えなかったが、やはり、魔の時間帯の呪縛から逃れることができず、徐々にTASAKIのペースへ。後半33分に大谷、38分には山本にゴールを決められ、そして、終了直前の43分には田中に駄目押しの5点目を決められてしまった。結果としては、2-5のスコアで、くノ一にとってのhome初勝利は今回もお預けとなってしまった。

TASAKIの仲井監督は「後半からは自分たちのリズムに乗れた。第2クール初戦として良いリスタートだ」と振り返る一方、伊賀FCの諸岡総監督にしてみれば「後半、相手のムードに押し込まれた。体力・気力が90分持続できるようにしたい」。今日の結果からも明らかなように、やはり、くノ一を襲っている、後半15分以降、特に30分以降の”魔の時間帯”の呪縛がなかなか解けないようである。

ただし、くノ一の敗北と言う暗い話題ばかりではなく、今日の試合では、中出ひかりのなでしこリーグ初出場、という明るい話題を出さないわけにはいかない。中出は、現在、吉備国際大学2年生の19歳。昨年の10月に中国で開催されたAFC U-19女子選手権の日本代表で、ミャンマー戦(予選)ではハットトリックを決めるなど、今後、”なでしこジャパン”のゴールハンターとしても期待される特別指定選手である。今日の初出場は後半の10分間のみであったが(後半35分に永留と交代で出場)、諸岡総監督の「使うに値する選手」という言葉どおりに、くノ一の得失点差-32(8節終了時)という大きな借りですら返せるのではないだろうか?とも思えてしまうような動きを見せてくれた。(Photo_12: なでしこリーグ初出場の中出) チームに合流してからはまだ1カ月ほどであるが、今後の活躍を期待せずにはいられない。また、くノ一の歴史を知る選手の一人である吉泉曰く、「がっかりしている時間はないっしょ。相手がベレーザであろうが(第9節はawayでベレーザ戦が控えている)、やるべきことが待っているのだから」という彼女らしいコメントも、チームやサポーターをpositiveな雰囲気に切り替えてくれるはずである。これもまた明るい話題として取り上げておきたい。

伊賀FC くノ一は、J関連のチームでも、企業チームでもなく、現在は、三重県伊賀市を本拠地とする地域密着型の市民チームである。なでしこリーグ第1部に所属するチームとしては、湯郷Belle(本拠地は岡山県美作市)なども同様ではあるが、例えば第8節(どちらもホーム開催)の観客動員数を比べてみても、Belleでは約1000名の観客であったのに対して、くノ一は上記の通りで300名程度。全人口としてみれば、伊賀市は美作市の約3倍である。したがって、より地域に根付した活動を通じ、観客動員を増やす余地も大いにあるであろう。”より地域に根ざした活動”という意味では、今期からは公式ホームページもリニューアル (http://www.igafc.jp/)し、選手ブログの設置などもその一環なのだと思われる(くノ一のマスコット、くノんちゃんのブログにも注目か!?)。Jリーグの百年構想の理念を善し、とするのであれば、くノ一のようなチームを応援する意義は大いにあるはずである。上野総合運動公園は交通の便が必ずしも良いわけではないが、駐車場もあり、車でのアクセスは容易である。まずは、近隣にみなさん、彼女たちの戦いを実際に目で観てはどうだろうか?ちなみに、入場は無料である。 今シーズンのなでしこリーグは残り13試合であるが、今後も「伊賀にくノ一あり」と謳えるような熱い戦いを期待したい。Andiamo avanti、くノ一!!

bg